ANARCHY

ヒリヒリするような緊張感、リアリティを帯びたリリックとパワフルなラップを武器に、時にブルージーに、時にエモーショナルに、聴く者の心を問答無用で揺さぶる。日本のヒップホップのメインストリームを歩み続けるラップスター、ANARCHY。

将来の選択肢が限られていて、何かを少し間違えれば道を踏み外してしまいかねない。そんな厳しい境遇から抜け出すために、その状況すらも逆手に取り、時に赤裸々に、時にユーモアを交え、リリックに思いを込めてラップで吐き出す。ラップに救われ、マイク1本でスターダムを駆け上り、スケールの大きな夢を実現する。ヒップホップはアメリカはもちろん、世界中のさまざまな国でそんな成功例を生んできた。そんなステレオタイプともいえるサクセスストーリーを日本のヒップホップシーンの真ん中で、地に足を着けて信念を曲げずに貫き通しながら実現してきたのがANARCHYというラッパーだ。

彼の生い立ちはしばしば自身の曲の中で歌われている。例えば、2006年のセカンドシングル「Growth」を聴けば幼少期の様子がよく分かる。ヒップホップに出会い、ラッパーを志すことになった思春期は、MUROをプロデューサーに迎えて制作された2011年のアルバム『Diggin' Anarchy』収録の「K.I.N.G.」でリアルに描かれている。真っすぐな言葉で力強く、たたきつけるように吐き出されるラップで情景や心情を生々しく描き出す。ANARCHYの魅力が存分に発揮された楽曲だ。

2008年には自伝を出版し、2014年には自身の生い立ちをアメリカ人監督が追いかけたドキュメンタリー映画の公開と映画『TOKYO TRIBE』出演があり、2015年からは『HiGH&LOW』シリーズにも出演、さらに2019年には自身が監督を務めた映画『WALKING MAN』を発表するなどマルチな活動を展開してきた。あくまでもヒップホップを軸にしながら活動の幅を広げる姿は、海外ではよく見かける。そんな成功したラッパーらしい振る舞いも、日本のヒップホップドリームの体現者と呼びたくなるゆえんだ。