GADORO

リリースを重ねるたびに研ぎ澄まされるリリックセンス。時にはシニカルに時にはコミカルに、硬軟織り交ぜながら描く人間模様は、聴衆の心を鷲掴みにする。

泥まみれで白球を追いかけてきたおばあちゃんっ子の野球少年は、ラップと出会い、人生を捧げる覚悟を決めた。自らを「クズの社会不適合者」と蔑みつつも、この道だけは信じて疑わなかった。裸電球がぶら下がった風呂なしの四畳半から始まった物語。失敗や後悔など、己の弱さをあえて歌詞にぶつけることで、人生に迷ったり、葛藤に苦しんだりする人々の共感を集めてきた。言葉の鋭さとは対照的に、GADOROの表現する世界は温もりを感じるほど人間味に溢れている。

GADOROの真骨頂は「日々の喜怒哀楽を、景色や匂いまで感じる濃度でぶつけてくる」と言わしめるほどのライブパフォーマンスだ。ファンに宮崎弁で語りかける素朴さと、猟奇的で鋭利なステージングの二面性を併せ持つ。細部までこだわり抜いたライミングと、かつてバトルMCとして頂点に立った実力に裏打ちされたパフォーマンスは、感情もろとも観客を引き込んでいく。

夢は武道館でのワンマンライブと公言する。2023年、仲間とともに立ち上げた新レーベル「Four Mud Arrows」から最新作「リスタート」をリリース。新型コロナウイルス感染症の感染拡大など音楽業界に逆風も吹き荒れたが、夢に向けて再び一歩を踏み出した。天国へ見守る祖母の耳に届くまで音楽を轟かせる。

宮崎県児湯郡高鍋町出身。

2017年に1stアルバム「四畳半」をリリース。その後、「花水木」(2017年)、「SUIGARA」(2019年)、「1LDK」(2020年)、「韻贅生活」(2021年)とコンスタントに楽曲を発表。最新作「リスタート」は前作「韻贅生活」のコンセプトだった「韻」をさらにブラッシュアップ。卓越した音楽性とライミングの技術を高次元で融合させた作品へと昇華させている。